10/31

2009/10/31

不思議な朝だった。その夜、友人には恋人ができ、兄夫婦には子どもが生まれていた。ぼくはというと、さびれたビジネス・ホテルの一室で目を覚ました。
 ぼくは珈琲を一杯だけ飲んで、幾分軽くなった財布のことを考え、少し後悔した後、近くの喫茶店でゆっくりと昼食をとり、甥のいる病院へ向かった。
 空は気持ちのいい秋晴れで、病院へ向かう足取りは、少しずつ軽くなっていった。

 彼はとても小さかった。とりわけ、爪は豆粒よりも小さかった。狭かったのだろう、耳は顔に張り付いたような形になっていた。まだ自由に動かないだろう手を振り回し、大きな泣き声を上げていた。泣き声をあげている時の表情はとても険しく、眠った時の表情はとても穏やかだった。
 彼を見た父と母(彼にとってみれば、祖父と祖母だ)は、彼の泣き顔を見ては元気だね、といい、彼の寝顔を見ればかわいいね、と言った。彼の母は、まだつらそうにしていたが、元気に笑っていた。彼の父(つまり、ぼくの兄だ)は、とてもとても残念がりながら、しぶしぶ仕事へ向かった、と、彼女は話した。ぼくは、ガラス越しの彼の泣き顔を、寝顔を、何度もフィルムに焼きつけた。

 周平くん、誕生、おめでとう。

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