死体を見た。
その礫死体は、ぼくと、その列車に乗った数百人の時間を四十分ほど奪い、昼食の機会を奪われたぼくを苛立たせた。
ぼくは、涙を流さなかった。だが、ぼくと、彼(あるいは、彼女)は人間だった。
その夜、とあるミュージシャンに会った。彼は高円寺に職場があって、先日火事のあった居酒屋の近くなのだと言った。居酒屋のあった場所には、日ごとに花が積まれていったのだという。他にも缶ビールや、カップ酒が供えられ、線香がわりなのだろうか、火のついたタバコがいくつもあったそうだ。
彼は言った。目に見えないものは、確かにあるのだ、と。
彼らは確かに生きていた。
ぼくは、生きている。
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